- 「びわこじてんしゃ」より
輪の国スタッフおすすめお立ち寄りスポット 観音の里で信仰にふれる
「びわこじてんしゃ 2019 秋 Vol.14」より
ビワイチで長浜を北上中、道の駅湖北みずどりステーションを越え、湖岸に沿って右に曲がるあたりから、びわ湖の表情が大きく変化する。その美しさに思わず目をやっているとすぐに片山トンネルに差し掛かり、しばらくびわ湖に別れを告げなければならない。このトンネルを抜けた所が高月である。その後ルートはしばらく余呉川に沿って走るが、まだ一度も向源寺(こうげんじ)の渡岸寺(どうがんじ)観音堂を訪れたことのない人は、ルートを少し外れてJR北陸線の方に右折し、高月駅のすぐ近くにあるこの場所に向かってほしい。ここに安置されている国宝十一面観音像は全国的に有名で、日本彫刻史の最高傑作の一つともいわれ、ビワイチ途中の疲れた身体を運んでも一見する価値がある。
実はこの辺りは「観音の里」と呼ばれ、数多くの観音像がそれぞれの集落のお寺に安置されている。もし渡岸寺の十一面観音の立姿に魅せられたのなら、是非一度自転車でこの地の観音めぐりに出かけてほしい(※びわ湖一周自転車BOOK「高月・木之本、信仰のまち」参照)。この地は8世紀頃、東にある己高山(こだかみやま)を中心とする山林修行の場となり、その後様々な信仰文化の影響を受けながら、観音信仰を基調とする独自の仏教文化を形成している。人々は信仰の対象として観音像を守り続け、これら奈良時代後期から平安時代初頭の貴重な文化財が戦国末期の戦乱の兵火をまぬがれて現存するのは、村人たちの篤い信仰のおかげである。
現在も多くの観音像は地域の人々の手によって守られており、安置されている場所を訪ねても閉っていることも多く、中に入るには予約が必要な所もあれば、掲示されている電話番号に電話をかけて近所の人に来ていただくという所もある。案内の方々にお出会いすれば、観音様に向かう人々の思いが、今でも連綿と受け継がれていることが分かる。毎年行われる「観音の里ふるさとまつり」では高月地域の観音堂が一斉に開帳されるので、この機会を利用するのも良いだろう。本年令和元年は10月20日(日)に開催される予定である。
(副会長 南井良彦)